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リフレインを紐解いて

拭おうとして笑った
滴り落ちる雨粒に手は届かない
それは少しぼんやりとした窓の外側

あの時は雨やどりをしたかった
きっとそうなんでしょう
きっとそれだけ
あなたにとってわたしはそれだけ

街がブルーグレーに落ちた日は
リフレインを紐解いて
昔々の甘くひび割れた
モノクロ映画の中を漂ってみるわ
浅いため息をつきながらわたしは

雨粒の通り道をただ
指で追いかけていた

未完の夢の端で

こころを固くして見る浅い夢は

不確かな迷い道

 

どこまで広がるのか

わたしの知らない夜は

世界には静寂しかなく

そのしじまが頼りなく広がり続けて

幻想のベールに覆われていた星々が

わたしを叱る

その声は無音では無い、何か

いつ迎えたのか

わたしの知らない朝は

乳白色の中で僅かな薄桃色が揺らぎ

無意味な不安を横目で諭す

その瞳は呼びこんだ、何か

 

夢では無い夢を追い立てて

わたしは何処に立つ?

何を求めた?

そんな問いかけすら切れ切れに薄れて

よく知った現実に身を滑らせる時

例え

夜と朝の間に見たものが真実だったとしても

それを語る言葉は遠ざかる

涙は充分に流れたでしょう

胸が痛くなるほどのおののきと

固く閉じた身を救うめざめ

さあ

行きなさい

怖くないから

次の花

落ちる

雨粒を受けるたび輝きを増していた花の色が落ちて
無機質な残像を残しやがて枯れ色に変わる

咲く

固いつぼみの先端がほぐれてとりどりのらっぱがひっそりと鳴る
運んでくるものは熱する前の朝の匂い

いつからだったんだろう
足の踏み場もない雑踏の中で
何かを愛して失って
それなのに平然と歩いている姿を
わたし自身が冷めた目で見つめていたのは

今朝みつけた朝露をはじく懐かしい花々に
茶色くくすむ過ぎた花々に
次の季節があるのかと聞けば
答えはきっと無言
それはわたしによく似た
わたしではない誰かが咲き誇り
ほら、変わらずに今年もまたと
瞬間足を止めるシーンに出くわすだけ

立ち上がれなくなるまで泣いてみようか
傷みの雫の中に埋もれてそれからまた

立ってみようか
せめて人らしく

波の音は明けない朝を洗って

足の下の砂が水にさらわれてゆく

波打ち際でわたしの世界は

どうしてこんなに小さいのだろう

恐れを美化し続けたいつまでも明けない朝

いったい何に酔った日々を繰り返していたのだろう

不規則に連なる音はやがて

次の崩れる波の音を運び

わたしの憂いと、儚い記憶を持ち去って行った

 

だからわたしはここに来る

だからわたしは
何も求めずとも良いのだと知るために

ここに来る

 © 2017 Midori Yoshida