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宿る

海原より来たりて

白く細い月の先端から
したたり落ちる薄い記憶の羽を掴んだ

それは真新しい産声を呼ぶ透徹した意思
微弱な熱をもつ揺らめきの中から見上げた時
月は満ちる日に向かい輝きをまとう
やがて記憶の羽はかすかに動きはじめ

わたしは
わたしが宿ったのだと 知った

それは

色も匂いも
言ってみれば形さえも

不確かな

モノ

姿の全てが瞳であるかのように
見据える

歩くべき大地を吸うべき空気を
ひたと見据える

それがおどろおどろしい現実だとしても
たおやかな流れだとしても

ただ見据えるものに手を差し出し
歓喜の衣に包まれて
歩き出す

生まれるものは

海原から静かに
静かにやってくる

満ちる潮に促され
意思がこうべを擡げた時

目を覚まし
命を宿した己の身体に
少しの驚きを見せながら
やがてそれも
記憶の中に沈む

ただ見据えるものに手を差し出し
歓喜の衣に包まれて
歩き出す

海原を振り返ることもなく
全ての生誕は
始まりを喜び
その一歩を
そして次の一歩を大地に乗せる

還るその日まで

はらからの声

西陽を受けた一樹の前に立ち
いつか聞こえるのだろうかと
耳をすます

土をかぶった根の奥から
風を受けて揺らぐ枝先から

声は聞こえるのだろうかと
耳をすます

やがて落ちるとわかり施された化粧は
哀しみの色なのか
喜びの艶なのか

遥か昔からそびえ立つ一樹の声

何故生まれてきたのかと
問い続けた日々の終焉に
答えはあるのか
聞こえてくるのか

遠く遠く
同胞(はらから)の声が

讃歌

不断

一点の星の淵に沈む

そこは

やがて次の海原へと続く場所

洗い流した身体を横たえ

安楽の雫の中へと記憶を落とす

邪悪も豊かさも無い

無の中に広がる

さざ波のような喜悦はやがて静穏へ

多くをを知り

何かを成さずと信じる者は

次の意思を与えられる時まで

目覚めを待つ

遥かなる巡りの道よ

道よ

細石を抱きかかえ

悠久の中を巡れ

道よ

恍惚の叫びなどたやすく置き去る

それは命を育てる大海の

その目の中に仮に映るだけの

不断の真であれ

 

カラカラに乾いた大地を 一滴の水がうがつ

 

そこを住処に決めた

痩せた草がそれを受け取り今日を喜ぶ

 

苔蒸した夜にも星が瞬き

猛る波間を陽が貫く

皺枯れた頬を落ちる涙に

血の通った熱を知った

去年と同じ場所に同じ花の咲く奇跡よ

 

生命(いのち)には力がある

それを信じることなくして

語れる言葉は 何処にあろうか

 

万古不易なる歓喜

ただ一途に歩けよ

 

生命には 力がある

画像と共にご覧ください

作品名

到達点

勝手だね

純粋無垢な闇

秘密基地が消えた時

怖れという影

儚くて

古址の秘

生まれる

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 © 2017 Midori Yoshida