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彼の方に

月の満ち欠けを感じるたびに

君を想う

ひと夜ごとに透き通り

儚くなりゆくその身体

けれど哀しみをたたえたとは

嘘だった瞳

ただ見ていた

目の中にあるその捨てがたき星を

満ちる時には大輪の花を咲かせ

そして欠ける時には声すら潜めて

幾たびもそれを繰り返す

まるでそれは月に住む彼の方のように

残り香だけを置き去りにした人

狂おしいほどの思慕

今夜は何処に

手の届かぬどこでその華を見せているのか

ハラリと落ちる時

沈む君の身体は

また目の中にある捨てがたき星を

探し始めるのだろう

言葉を失くしたわたしは

砂の海で眠れば

言葉を失くしたわたしは

青い小鳥のように
今日もさえずる

言葉を失くしたわたしは

たっぷりと豊かに
そして可憐に
その通る路々で
揺れる花々にキスを贈る

少し困ったふりをするのは
とても良く見えてしまった時

それは誰かの背中で揺らぐ
蜜のような淪落への多招き

言葉を失くしたわたしは

わたしの手の中にある
純白のブーケを今日はどうしようか
明日はどうするだろう
と、しばらく考えても

きっと衣のヒダに隠しながら

さえずるのでしょう

 

わたしは
し・あ・わ・せ

サラ
    サラ
        サラー

指の隙間をすりぬける粒子

目の前に広がるものは

少し熱を持った嵐の後の砂漠

それは規則正しい波を従えた

何者をも寄せ付けないはずの

砂海

あの時

手を伸ばせば星をつかめそうな

輝きを放つ摩天楼の中で

どうしてわたしは笑っていたの

少し憂いを含んだ唇は

艶やかなルージュがよく似合う

軽やかなステップで

何を演じていたの

周りを囲む人々は半透明だったのに

乾いた嵐が過ぎた後

この砂海にあったはずの摩天楼が

消えた

指の隙間からすりぬけてゆく

全てがうつつの蜃気楼

 

わたしはいくばくかの喜びを秘め

砂の海に沈んだ

白に溺れて

白の花ばかりを愛する人

可憐で純真な闇に包まれて

泣くのでしょう

地面から眺める空が

こころを引き裂きいたぶるのだと

泣くのでしょう

薄く伸びる光の帯に絡まれながら流す涙は

もう充分に

蜂蜜のように甘く甘く

染みをつけたでしょ

泣きなさい

彷徨うところの闇こそを抱きしめながら

安楽の時間へと落ちてゆきなさい

白の花ばかりを愛する人

そうやってあなたはやがて

滑稽なほど色とりどりの花に顔をうずめながら

口角をあげたまま

眠るのでしょうから

SHADOW

おいらく

影と重なる

背中の目が見つめる情熱と亀裂
バタつく上肢がほら小声をこぼす

鬱陶しいと

白い羽はいかがですか
籠を持って売り歩くのは
道化師の前を歩く天使の子供

白い羽はいかがですか

怯え始めた影が泣く
お願いわたしを見ないで

月明りだけの中で呼吸を繰り返し
白の虚心が刺さるとき
天使と道化師がすり替わるのを知った

影と重なる


誰よりも愛おしい君

わたしと一緒に眠りましょう

よく知りもしない草に手をついて
落とした色を見る

星の少ない夜にあらわれた
翳りをおびる無彩色
どこまでもどこまでも広がり
落とした色は仮の姿だと思い知った

熱の枯れた土の上で
目を閉じて
熱の枯れた身を
ひとり笑う

知ったつもりの黒いしじま

待ちくたびれた星が
蛍を呼んだ

 

言霊

言葉が羽を手に入れて

一気に空高く駆け上がる

冷たい風に任せることもできずに

自分の意思を示そうとすると

煽られる

それでも言葉は嬉々として突き進んでゆく

言葉を失ったわたしは

ぐずぐずと手をつきながら地べたをはい回る

踏まれるほどにちいさくまるまっても

ニヤっと笑った靴底に

蹴り飛ばされる

見上げた空にはただ風が渦を巻くだけ

なんてこと
なんてことでしょう
だからあの時、包んだ真綿を剥がさなければ
わたしは安心して……

安心して…… それは違う
貴方、それは違うわ

言葉はね

もともと意思を持つ日を知っていただけ
そして貴方は

仮にしつらえられた安直な優しさの波間に
溺れていただけ
溺れていたいと願ってた
だけなのよ

ヒマラヤンブルーの青いケシの花のように
真綿など最初から幻想だと知っていたでしょう
さぁ、顔をあげてひとりで呼吸ができることを
知りなさい

わたしの中のわたしの声が見限り遠ざかる

その前に

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 © 2017 Midori Yoshida