Gallery 4

​わたしのうた

何も持たずに
裸で生まれて来たわたしは
妹弟の手を取り
坂道を歩いてきたわたしは
泣き疲れて眠ったわたしは
かけがえのない
命のいくつかを見送ったわたしは
家族の優しさに震えたわたしは

気がつけば幾重にも繋がれた
四季折々の景色と忘却の中に
そっと
置かせてもらったのだと知った

歩をすすめる度足元にひとつ
光り枯れ色褪せまた色付いた
そのひとつひとつが

わたしの詩(うた)

生きて進め

生きてきた道で何を知ろうと

行く末で誰とすれ違おうと

目と耳と皮膚を信じてみよう

大海をゆく小舟の中で

星を頼り 風を頼り

船首を向ける先を

ひとりわたしが決めてみよう

風の立つ海原も凪いだ水面も

自らを導にした等しくわたしの道

裸で生まれてきた

名無しで生まれてきた

そのわたしの

目と耳と皮膚を信じて進め

脈々と連なる命の連鎖の

水滴ほどのひとコマを

尊厳あるそのひとコマを

儚きいとなみに知る道を行け

生きて進め

忘却へ

誰とここに居て
誰とこの風に吹かれたか
それを覚えていよう

荒ぶる気持ちを
声なき祈りを
その波間に放った日々

遠く凪いだ水平線
心のひだを写すように
その姿は刻々と変わり
明日の姿は朧の夢
それでも悠々と
果てを見せずにそこにある

ひさかたの
ひかりを受けて語る海
この身の枷を
知ってか知らずか

今を目に焼き付けてそして忘れよう  

今日と、過ぎた後の明日をも忘れよう

見つめるわたしのこころのままに
母なる海に返してみよう

誰とここに居て
誰とこの風に吹かれたか

ただそれだけを覚えていよう

おかえり

西日の中を歩いていた

泥で固めた小さなお団子をふたつ大事に

手のひらの中で崩れないようにと

とっても大事に持ちながら

西日の中を歩いていた

から

…… から

驚かないようにと思って

声をかけなかったんだその時は

言い訳ひとつ

路面電車がガタゴトと音を立てる

西日の中を歩いていた

でも……

でも

顔を見てみれば良かったのに

その時に顔を見てあげれば

きっと歪んでいたことに気が付いたんだよ

迷子はどこにいても迷子

帰る家を知っていても迷子は迷子

お豆腐売りのおじさんが

ラッパを吹きはじめる西日の中にいた

抱っこしようね

歩き疲れた小さな女の子は

ほっとして眠り込んでしまった女の子は

ずっと西日の中を歩いていた

何十年も何十年も

お家を探して西日の中を歩いていた

 

おかえり

旅立ち

嵐が去ったあの日から

荒野と化したものに目を背け

ぬるま湯の中で

それでも膝を抱えていた

葉を落とした大木は

冬を越えまた

芽吹くだろうに

いったい誰の人生なのか

空が大きいと思い出した日

大地を讃える夕陽に

震える涙が落ちた

とどまる季節は過ぎ

目指す場所はひとつ

見送るは一樹なり

もの言わずはなむけと舞う

緋は沈まずー旅立ちー

作曲 : 花本恵介

詩 : 吉田翠

詠みと歌唱 : ちびまゆ

動画 : 吉田翠

花本恵介さん 作曲の原曲『緋は沈まず』

https://note.mu/hanasuke2520/n/n7bd8de178d91?magazine_key=m3215c9647ba5

ちびまゆさんオリジナル音声

https://note.mu/chibimayu/n/n6ed3fa729880

 © 2017 Midori Yoshida