お母さんの「ごめんね」

お母さんの「ごめんね」


目を塞ぎ耳を塞ぎ 押入れの中で すり切れた縫いぐるみと遊んでいる小さなおんなの子


もうそろそろ出てきましょうよ


お母さん こんなにも無理のない 穏やかな空を いつか一度は見てみたかった


あなたの娘と あなたの娘の娘の頭に置いた手が 何度も何度も滑り降りて

ごめんね


本当に必要なのはその言葉じゃないとわかっていても

小さくなったあなたの背中は いずれわたしも辿る道


お母さん こんなにも無理のない 穏やかな空を いつか一度は見てみたかった いつか一緒に見てみたかった


すり切れた縫いぐるみをだっこした 小さなおんなの子にかける わたしの言葉もたったひとつしか見つからない


「ごめんね」



 © 2017 Midori Yoshida