海原より来たりて

海原より来たりて


それは

色も匂いも 言ってみれば形さえも

不確かな

モノ

姿の全てが瞳であるかのように 見据える

歩くべき大地を吸うべき空気を ひたと見据える

それがおどろおどろしい現実だとしても たおやかな流れだとしても

ただ見据えるものに手を差し出し 歓喜の衣に包まれて 歩き出す

生まれるものは

海原から静かに 静かにやってくる


満ちる潮に促され 意思がこうべを擡げた時 目を覚まし 命を宿した己の身体に 少しの驚きを見せながら やがてそれも 記憶の中に沈む ​ ただ見据えるものに手を差し出し 歓喜の衣に包まれて 歩き出す ​ 海原を振り返ることもなく 全ての生誕は 始まりを喜び その一歩を そして次の一歩を大地に乗せる ​ 還るその日まで