まだ遠く

まだ遠く


どんな季節にしても、夕方というものは気持ちを鷲掴みにしてくる。

忘れていた事をグッと空に浮かびあがらせて突きつけてくるかのように。 あの時漕いでいたブランコの、キコキコいう音までも。 歓声を上げた汗のほとばしりを。 もう二度と会えない人の皮膚の温度を。

やがてフェードアウトしてゆく切れ切れを、決して掴ませないように、大夕焼けという舞台装置に立ち上らせる。


人の夕暮れ。 ここを越えて、忘れ去る事ができた者が向かえる安らぎの星空。


まだ遠いのか。 囲んだ夕餉の上にひろがるそんな一天を、わたしは喉から手が出るほど欲しがっている。