偲ぶ季節
夏は偲ぶ季節でもあろう。 薄れる記憶。愛おしく哀しく、それだからこそ人は生きていけるのだと、何度も思った。 未練を離し、か細く忘れていく事が供養になると聞いた事がある。真理であろう。
ただそれでもたまに思い出す。 愚かしくもそれは人だから。
うつろうものを手繰り寄せ、その掌から祈りの舟に乗りやがてさらさらと散ってゆく白い花
忘れがたきと思うて幾歳月。
いつか来た道。 やがてゆく道。
しばしの時に耳すませば聞こえる声は命の面影 。
天雲のゆく空の先遠けれど かすむ記憶に父の声聞く
もちろんそれは父だけではない。