砂民

砂民


月が大きな夜に思う

その黄金の下にあるものを

いにしえのべドウィン

遊牧の民の足跡


漆黒の砂漠で

冷えた砂が波立ち震えるのは

いったい誰のせいなのか

べドウィンが愛した家族の砂海

ウードの弦を爪弾く人に拒まれた

何を知りたいのかと


遥か昔

絹の道しるべを背中にしょったひとりの男が

祈りの言葉を口にした


男が縛りあげたものは 伝統と争い

男がもたらしたものは 繁栄と不自由


ひと足ふた足と

やおら進む時間に引き摺られ

気高き炎を内に秘めたまま

やがて彼らは遊牧を見限った


べドウィンの家族が捨てたものは

砂に埋まり幻とささやかれたのだろう


気まぐれなラクダが空を見る


ご覧

かつて手を差し出せば届く程だった黄金の月

今は砂だけが砂だけが広がり

怖れにも似た純朴な涙が

儚い夢を閉じようとしている


そしてわたしは今日も月を眺めながら

見た事の無い記憶を 遠ざけた

 © 2017 Midori Yoshida